重粘土水田における亀裂生成が水稲の水分吸収および収量、品質に及ぼす影響

摘要

東北の日本海側などに広く分布する重粘土水田ほ，排水性が著しく低いことから，大型機械による収穫作業を安定して実施するためには，落水後の速やかな土壌乾燥が重要である．通常，水田作土には乾燥に伴い表面に亀裂が生成し，それを契機に暗渠に繋がる水みちが生じ排水が促進される．特に，粘土含量が多く粘土鉱物が親水性のスメクタイトを主体とする重粘土水田では，亀裂の発達が排水性の向上に重要な役割を果たしている．近年の水稲収穫作業は大型コンバインを利用する場合が多く，圃場が軟弱な状態での作業性は著しく低下し，刈り遅れにより米の品質低下を招く例も多い．そのため，重粘土水田では中干し後の降雨により乾燥した土壌が再び軟弱になることを防ぐ目的で，潅水時期を遅らせることから土壌の乾燥が過度に進み過剰な亀裂が生成する場合が多い．しかし，土壌の乾燥は進行するものの，過剰な亀裂により表層に分布する水稲板が切断されることなどにより，水稲は急激な水分ストレスを受ける可能性が考えられる．