フツ化物イオン処理によるアロフェソおよびイモゴライトの表面特性変化-表面酸性および陽イオン交換容量の増大と分子軌道法計算によるメカニズム解析-

摘要

火山灰土壌ほ，雨水やかんがい水により植物栄養素が容易に流亡し，保肥の点で問題が多い．この農業生産上好ましくない性質は，アロフェソおよびイモゴライトの表面特性に起因する．植物生育に重要な土壌の養分保持能を強化し改良する目的で，本研究でほ，アロフェソおよびイモゴライトについて，フツ化物イオン処理で化学構造をナノレベル加工することによって，陽イオン交換機能を改善することを試みた．1）陽イオン交換容量は，フツ化アンモニウム水溶液処理によって，無処理物よりもアロフェソでは3から4．5倍，イモゴライトでは22倍大きくなった．表面酸性強度も，両試料ともこの処理によって増大した．2）赤外吸収スペクトル測定から，フツ化物イオンは，おもに構造中のAl-OHやAl－OH－AlのOHと置換し存在すると推定した．3）モデルクラスターを用いた分子軌道法計算より，フツ化物イオンがアロフェソおよびイモゴライトのAl－OH基のOHと置換すると，近傍のシラノール基の解離度が増大することがわかった．4）以上より，フツ化アンモニウムなどの水溶性フツ化物塩を含む資材の施用により，アロフェソやイモゴライトの化学構造をナノ加工することで，火山灰土壌の植物養分保持能を改良できる可能性が示唆された．