長野県の農業と土壌肥料－環境保全型肥培管理法の展開－

摘要

長野県は本州のはば中央部の高標高地帯に位置し，南北200km東西100kmの広大な面積を持ち，日本の屋根と称される3，000m級の高い山にかこまれ，盆地，山地，谷が複雑に分布し起伏が大きく，地質構造は幾多の地殻変動により複雑な様相を呈し，土壌生成に関与する地形や母材も多様で，分布する土壌の種類ほ非常に多い．農耕地は山地に囲まれた平野，扇状地，盆地，河岸段丘，丘陵地帯などにおいて標高300mから1，400mまでの1，100mの垂直域に分布し，全体として黒ボク土の占める割合が多いが（40．2％），土壌型ほ13土壌群，43土壌統群，122土壌統，582土壌区に細分され，全国の土壌群ならびに土壌統群の81％と土壌統の40％が長野県内に分布している．水田と畑はそれぞれ58，500ha，56，800haとほぼ二分し，畑は普通畑が35，600ha，樹園地が17，500ha，牧草地が3，720haを占めている．気象は内陸性気候域にあるため夏季の日中の気温は300C以上になるが，日較差が10℃以上と大きく，夏を中心に春から秋にかけて冷涼であり，降水量は南部や周辺の山地を除くと少なく東部の野菜主産地ほ年間の総降水量が1，000ミリに達しない．日照時間も年間2，000時間以上に達し農業生産に有利な気象になっている．