マガキ成貝飼育海水へ浸潰した採甫器への幼生付着率に及ぼす幼生サイズおよび餌条件の影響

摘要

かき類は2005年の我が国貝類養殖総生産量42．5万トン（殻付き）の約50％の21．9万トンを占める代表的な養殖対象貝類である。広島湾およびその周辺海域（以下広島湾とする）で養殖されるマガキCrassostrea gigasの生産量は全国生産量の50％にあたる11．2万トンに達する。広島湾では，天然のマガキ椎貝を養殖用種苗として採苗し，筏式垂下養成が行われている。マガキ椎貝を付着させる採苗掛こほ，ホタテガイPatinopecten yessoensisの殻が広く利用されている。人工種苗をこれら垂下養成法により養殖するための課題のひとつとして，マガキ幼生を採苗器であるホタテガイの殻へ短時間に均等に十分量付着させることが挙げられる。平田1）は，この課題を解決するた軌採苗器をマガキ成貝飼育海水に予め浸漬して採常に用いる方法（以下採苗器予浸法とする）を考案した。本方法の効果は三倍体マガキの採苗2）においてすでに認められているが，この方法による幼生の付着促進境構は明らかになっていない。採苗器予浸法において幼生付着率に影響を及ばす要因として，付着基質の浸漬条件と幼生の生物学的条件が挙げられる。付着基質の浸漬条件について，筆者らは前報3）で最高の幼生付着率を得るためには，成貝が海水に排出するアンモニア態窒素濃度と採百器浸漬時間の横倍を予浸条件値として20 mg/L、h程度が必要であること，また，採甫器浸漬処理中の成貝への給餌の有無あるいは給餌量の違いは付着率に影響を与えないことを明らかにした。一方，幼生の生物学的条件についてはまだ十分に検討されていない。本研究では，採苗器予浸法において付着率に影響を与えると考えられる幼生の生物学的条件を明らかにするため，幼生の媒精からの経過日数とサイズおよび付着実験中の幼生に与える餌濃度の違いによる付着率の差異を調べた。