サラワク熱帯雨林におけるフタバガキ科林冠構成種の不均一な気孔開閉による蒸散速度の調節

摘要

1．マレーシア，サラワク州ランピル国立公園で，フタバガキ科のDipterocarpus pachyphyllus，Dryobalanops aromatica，Shorea parvifolia，Shorea pilosa，Shorea smithiana，の5種5個体の林冠木を対象として，気孔の開閉状態と蒸散速度の関係を調べ，快時の日の日中における蒸散作用の調節機構にうい七検討した．2．快晴の日の正午頃，蒸散速度め測定値は大きくばらついた．加圧浸潤法によって，菓面に浸潤斑がパッチ状に形成され，一枚の黄の気孔開閉が不均一におこっていることが明らかになった．日中の蒸散速度のばらつきは気孔開閉の不均一さが要因のひとつであることがわかった．3．蒸散速度と浸潤斑比はきれいな正比例の関係があり，気孔の開口部からの蒸散速度ほ一定であることを示した．蒸散速度は気孔の聞き方の大小よりも開いた気孔の占める割合に関係することが示された．4．フタバガキ科の林冠構成樹倭では，気孔の開閉を局部的に制御する蒸散速度調節機構を発達させることにより，過剰な水分消費を抑制しつつ蒸散作用を維持していると考えられる．