住宅内温熱環境の実態と居住者の意識に関する研究（その5) 冬期における各居室の予想温度と実測温度の比較

摘要

近年，地球温暖化対策に加え，震災、原発事故の発生により，少ないエネルギーで暮らす方策を検 fftrる傾向が強まっているが，過度の節電意識や寒さへの慣れは健康被害をもたらす恐れがある。冬期の居室間の温度差による血圧変動が原因で脳卒中や心筋梗塞を引き起こす恐れのあるヒートショック（以下，HS)死者数は 年々増加傾向で，15,000人/年になることが推定されている'>。この原因の一つに，居住者が温湿度の現状を認識し ていないことに伴う過度の節約が考えられる。これまでに，室内の温熱環境や入浴実態に関する研究は数多く，橘口ら2)は大学生の浴室内の暖房方法の違いが，生理心as応に異なる影響を及ぼすことを明らかにした。吉田3)4)は住宅の性能が新省エネ，次世代省エネ基準問わず，冬期のHS発症危険性が高レ、地域があることを明らかにしている。高崎らは高齢者が浴室やトイレの寒さに寛容であることを示唆しており5)，冬期における高齢者の入浴習慣が地域で異なることを明らかにした6)。しカゝし，居住者のHSに関する認知度や予防行動の調査は少なく，居住者 自身が住宅内温度把握実態を調査した例もほとんど見られなレヽ。そこで，本研究では，居住者のHSに対する問題 意識や対策行動，住宅内温熱環境の実態を明らかにし，健康へのリスクについて考察することを目的とする。