クロー ン牛研究における最近の成果一体細胞ク口一 ン正常産子作出率向上への試み一

摘要

体細胞クローン技術は、ドナーとなる動物の体 細胞から同一ゲノムを持つ個体を多数得ることが できる技術である。計画的、効率的な家畜改良が 可能となること、また、口蹄疫等伝染病により淘 汰を余儀なくされた優良種畜の遺伝的な再生が可 能となるなど、この技術の実用化による経済効果 は将来的に非常に大きいと考えられている。家畜 (ゥシ）における受精卵クローン技術については、 研究、開発が進められ実用化に至っているが、体細胞クローン技術については、1998年、Katoら による体細胞クローンゥシの初めての成功から 10年以上たつた現在でもその実用化には至って いない。体細胞クローンゥシの生産率は、胎盤の 異常、流死産や生後直死などのために依然として 低く、また無事出生しても約半数は過大子、虚 弱、免疫不全などの異常を示し、出生後1ヶ月以 内に死亡する例も多く、これらが実用化への大き な障害となっている。家畜の体細胞クローン技術 は、体細胞（ドナー）を除核した卵子細胞質へ核 移植することで、体細胞の核が初期化（リプログ ラム）され、個体へ発生する全能性が得られると される。しカゝし、近年の研究により、核の初期化 が不完全な場合、DNA メチル化レベルや遺伝子 発現異常がみられ、胚移植後の流産などの原因と なっていることが明らかとなってきた。