クロマツ菌根共生系におけるカドミウム添加の影響

摘要

日本のカドミウム使用量は世界第一位の年間約7000トンであり，非鉄鉱山，精錬所やごみ焼却所，ニッカド電池解体処分場などを汚染源とした環境汚染が問題になっている。 農用地土壌汚染防止法による基準値以上の汚染地域は，累計で95地域6683ha（平成14年）に上る。 土壌中のカドミウムは，根の発育障害，無機栄養素の吸収，輸送機能阻害，葉巻やクロロシスなどを引き起こすことで植物の生育を阻害し，植栽などによる汚染地の環境修復を困難にしている。 本研究は，カドミウム汚染地域の緑化の推進を目標とし，多くの樹木の細根に共生する外生菌根菌に着目した。 外生菌根菌のカドミウム耐性の研究では，ドイツトウヒ（Picea abies）とヒダハタケ（paxillus involutus）との菌根共生系，ヒダハタケへのカドミウム暴露などが報告されており，外生菌根菌の一部にはカドミウムに対して耐性を持つ種が存在すると考えられている。 しかしながら，日本では外生菌根菌とカドミウムに関する研究は報告されていない。そこで本研究では，外生菌根共生系のカドミウムに対する反応の基礎データを得るため，カドミウム添加培地における外生菌根菌6種の培養実験を行うとともに，クロマツ実生とコップタケの菌根共生系を形成させカドミウムを添加することでその影響を調査することを目的とした。