年輪幅、炭素同位体比測定による中国黄土高原に生育する樹木の耐乾特性

摘要

中国における砂漠化の主な原因は過度の伐採、過放牧、過度の農耕など人為的なものである。このように砂漠化した土地をもとに戻すには緑化が必要であり、これまで中国、日本政府やNGOによって中国黄土高原に植林が行われ大きな成果をあげている。 しかし、その基礎となる樹木生理学的な検討は不十分な点が多く、1970年代の植林地では成長に伴う水分消費の増大と土壌中の貯留水分の枯渇によると思われる小老樹の発生がしばしば見られる。 従って、植林樹種を選定する上で樹木生理学的な検討を行い各地域に適した耐乾性の強い樹種を選抜することは大変重要である。炭素安定同位体比（delta~(13)C）の測定は、C_3植物の水利用効率の推定に有効であることが知られている。植物の葉が気孔を開いて大気のCO_2を多く取り込むとdelta~(13)Cの値が小さくなり、気孔を閉じるとdelta~(13)Cの値が大きくなるという性質を利用して、主に耐乾性の強い作物品種の選抜などにおいて多くの成果を上げている。 また、福田ら（2001）によると、黄土高原中部の駅西省中北部から採取した樹木の炭素同位体比（delta~(13)C）と年降水量との関係に高い相関が得られている。 しかし、delta~(13)C測定は年輪成分全体ではなく、セルロースを対象とすることが好ましいとされており、また成長量と降水量との関係は検討されていない。 従つて、本研究では、各地域に適した植林樹種の選定を行うための基礎として、年輪幅とセルロースのdelta~(13)Cによって中国黄土高原に生育する樹木の耐乾性を調べた。