分光反射特性を利用した斜面崩壊地の予測 －樹冠の水分変動による土壌水分変動域の抽出事例－

摘要

近年，地球温暖化等の環境変動により局地的な豪雨が頻発している。 鹿児島県においても北部地域で2003年7月20日ならびに2006年7月22日に日雨量350mmを超える記録的な大雨が発生した。 これらの局地的豪雨は大規模な斜面崩壊。大小の河川の氾濫などを誘発し，多大の被害や損害をもたらしている。 土壌水分の変動に関する研究は，裸地等でSeino（1990）とAbee et al．（1997）等によってなされているが，特に森林地帯ではその複雑性から簡易な手段での正確な土壌水分の変動を把握するまでにいたっていない（Arimitsu，1982；Kosugi，2005）。 さらに，山腹における降雨の流出過程は十分に解明されているとは言いがたい。 しかし，Asano et al．（2005）によれば，降雨時に流出する水分は斜面土壌に貯留されているという仮説が最も有力であるとされている。 つまり，局所豪雨によって崩壊を引き起こす斜面の土壌水分は過飽和な状態であると考えられる。 さらに斜面の土壌水分が過飽和な状態であるため，ある浸透能力に従って変動している通常の斜面に比べて変動の少ない箇所であると考えられる。 また，山腹の植生の水分変化は土壌中の水分状態をある程度反映すると考えられる（Tanigawa et al．，1996；Uchijima and Seino，1985）。