開発途上地域におけるコムギの生産と品種開発

摘要

コムギは，イネ，トウモロコシ，オオムギなどの主要穀類の一つであり，世界的に広く栽培される。その約半分が栽培不良環境の多い開発途上地域で生産、消費される。 国際トウモロコシ、コムギ改良センター（CIMMYT，本部メキシコ）は，メキシコ政府とロックフェラー財団が1943年から共同で実施してきた研究プロジェクトを基礎にして1966年に設立され，これらの地域を対象としてコムギの品種改良を行っている。 CIMMYTが開発したコムギ品種は，短得で非日長感応性の特性を看し，メキシコの栽培環境に類似したインド，エジプトなどの低緯度潅漑地域における生産量を飛躍的に向上させ，1970年代の「緑の革命」となる多大の成果を上げた。 しかし，近年では，開発途上地域における急激な人口増加に即応するための食料の安定的かつ持続的生産の確保が必須となっている。 そこで，開発途上地域におけるコムギの生産の向上と安定化のための品種改良の動向についてまとめた。なお，本報告は，2002年7月17日～18日に水戸市で開催された第41回ガンマ1－フィールド、シンポジウム「作物研究の海外における動向と突然変異」において講演した内容を一部修正したものである。