イネの高温登熟研究の今後の方向

摘要

近年全国的に夏季の高温による白未熟粒などの未熟粒や胴割れ米など玄米の外観品質の劣化や粒垂の低下が問題となっている。 また熱帯アジアでも夜間の高温化が収量漸減を招いている可能性がある（Peng et al．2004）。 地球温暖化によるコメ生産の低下が予測されており（清野1995），今後のさらなる高温化を想定した場合収量や品質低下軽減のための栽培管理法や耐性品種の開発は温帯.熱帯において急務と考えられる。しかし，これまで高温による不稔発生についての知見は多いが，やや低温域での高温が登熟過程に及ぼす影響については生理.生態メカニズムに不明な点が多く対策確立の支障となっている。 そこでここでは高温によるイネの登熟，収量，外観品質への影響とそのメカニズムに関連する研究を紹介し，今後の研究課題を整理したい。 以下本稿では断りのない限り“高温登熟障害”は基本的に粒垂低下と白未熟粒の発生を指すことにする。