薬用作物センプリ栽培の現状と展望〔2〕 2.センプリの生産および流通の課題と今後の方向性

摘要

センブリは，東北から四国，九州まで各地の日当 たりのよい草地や疎林などに自生している.生薬名 を「当薬」といい，日本において室町時代末期に開 発された民間薬で，古くから苦味健胃薬として用い られてきた.中国の本草書には，センプリの記載がないため，日本固有の生薬といえる.1978 (昭和53) 年以前は，山野に自生するセンプリを採集して自然 生産に頼る生薬であった.岩手県や山形県，秋田県， 石川県，福井氣長野県などから年間5-10t程度 が採集されていた（小林1974). センブリの栽培化の試みは，第2次世界大戦後の 1950年前後から始められていたが，産地形成に至つ たのは，長野県が初めて栽培化に成功した1980年 前後である.長野県では，野菜花き試験場北御牧試 験地（現野菜花き試験場佐久支場）で1973年から センプリの栽培研究に着手し，発芽条件および生育 期における受光量などが明らかにされ，1976年にセ ンプリの栽培法が体系化された.翌1977年からは 農家でセンプリの栽培が始まり，1978年から巿場に 出荷され，特産物として定着してきた（宮沢1987).