異能の水稲育種家志村英二氏を偲んで

摘要

多くの水稲品種の育成と作物育種法研究に貢献した志村英二氏が亡くなって1年以上が過ぎた．志村氏は，農業技術研究所で作物育種の理論研究を深めた後，九州農業試験場や青森県農業試験場において多くの水稲品種を育成した．定年退官後は，学際的な農業研究書の翻訳や，中国の大学教育に取り組んだ．同氏は，専門分野のみならず多方面にわたって博覧強記なうえ，生物現象の数学的取り扱いや語学などにおいて卓越した力を示し，異能の水稲育種家であった．鋭敏な知性と該博な知識に基づく指摘は，水稲育種やその基礎研究に携わるグループに多くの刺激を与えた．そのような同氏の足跡をたどり，主な業績を紹介したい．