高糖系ウンシュウにおける高品質果実の連年安定生産のための枝しょう管理技術－優良結果母校確保のための摘葉処理を中心として－

摘要

ウンシュウミカンの生産量は昭和50年頃のピーク時と比べると1／3にまで減少しているが，それにもかかわらず依然として供給過剰であり，個人消費の伸び悩みの影響もあって価格が低迷している．生産者サイドは量よりも質を求める消費者ニーズの変化に対応して，高品質でより単価の高い品種への転換を進めてきた．そのような中で導入された「青島温州」や「大津四号」などに代表される高糖系ウンシュウは，その名のとおり糖度が高い高品質果実を生産できる反面，果皮が粗く，じょうのう膜（いわゆる袋）が硬く，商品性の低い大玉異になりやすい．さらに，樹勢が強く，隔年結果が激しいという欠点も併せ持っている．隔年結果対策として，近年，隔年交互結実栽培や樹冠上部摘果法などの新技術が開発され，現場への普及が始まっている．しかし，隔年交互結実栽培は従事者の高齢化や大規模経営など慢性的な労力不足，あるいは，栽培技術の未熟な経営体には最適であるが，カンキツ農家の多くを占める中小規模農家ではリスクが大きく導入が進んでいない．また，樹冠上部摘果法も隔年結果の是正に有効であるが，隔年結果はいわゆる樹相によるところが大きいため，不適正な樹相の樹では単純に樹冠上部の果実を摘果しても隔年結果是正の効果は低い．このように，高糖系ウンシュウでは一部の産地を除けば高品質果実の連年安定生産ができておらず，経営を不安定にしているのが現状である．