老農船津伝次平と西洋農学

摘要

明治10年代から20年代にかけて中村直三，奈良専二，林遠里等の老農が活躍する．そのためこの時代を老農時代と称することがある．彼らに活躍の場が与えられたのは，明治初年に始まる政府の勧農政策が失敗に帰し，在来農法の見直しがすすめられたからであった．船津伝次平もまたこのような時代に活躍した老農の一人である．船津伝次平は天保3年（1832）11月1日に上野国勢多郡原之郷で生れる．父親が開いていた寺子屋で読み、書き、算盤等の基礎教育を受ける．次いで藍沢蓼園が主催する私塾で漢学を学ぶ．嘉永2年（1849）からは和算を学び，3年後に関流の皆伝を受ける．安政4年（1857）に父親が死去し家督を相続する．安政5年（1858）には名主に選出されて3年間つとめる．慶応3年（1867）に再び名主に選出され，明治3年（1870）には郷中取締と勧農方を兼務する．