包絡線分析法による旧ソ連諸国の農業技術効率性と収束の分析

摘要

ソ連農業の研究は細川［1985］の精力的、包括的なものがある．しかし，ソ連農業の技術効率性と崩壊に関する研究は未完のものであった．本稿は第1に，旧ソ連の農業が，15共和国でいかに異なっていたかを，技術効率性を通して観察し，第2にコルホーズ，ソホーズ等当時行われていた農業政策とソ連の崩壊との関連や評価をもみることを目的としている．そこで，全てのデータが揃い，経済改革が始まった1960年からソ連崩壊直前の90年迄の約30年間における農業生産に関するノンパラメトリック（生産関数等を推定しない方法）な包路線分析法DEA（Data Envelopment Analysis）による総技術効率性（ROIN）を計算した　 そして，得られた総技術効率性，純技術効率性（PTE），規模に関する効率性（SE）と配分的効率性（MIX）を用い，収束か発散かに関する検定を行い，旧ソ連15共和国の農業が如何に効率性で異なっていたかの計測を行った．本稿の構成は以下のようになっている．第1節は，①収束の概念とクロスセクション分析による検定第2節は，②確率的な収束モデルでの検討であり，第3節は，③パネルデータの単位根検定，さらに④技術効率性の変化や⑤技術フロンティアーのシフトの合計5検定結果の構成となっている．