シリーズ現代経済研究17 農業問題の経済分析

摘要

本書は、GATT（WTO）の基本原則である関税化、いわゆる「貿易自由化」が一層進展することを展望しながら、これまで国内対策を中心に展開してきた農業保護的農業政策から脱却し、国際規律や国際ルールを条件に市場原理を活用した「農業ビッグバン」と呼べるほどの改革を期待して執筆されている。 本書の総括に当たる本間「まえがき」「第一章日本農業と新基本法」、奥野、本間「第九章日本農業の将来と農業政策」で展開されている論旨は明瞭である。 今日求められているのは、構造改革を通じた大規模農家の育成である。 経済発展に伴う農業所得の相対的縮小は、市場に任せておけば、農業従事者の退出による農業人口の縮小という形で処理され、農業従事者一人当たりの農業収入は維持され、農業構造の変革も進む。 しかし日本では、農業を「弱者」と位置づけ、所得補償を中心とした農業保護政策をとってきた。