WTO閣僚会合の決裂と今後の交渉の行方

摘要

2000年から開始されているWTOのドーハ.ラウンド交渉は、9年目を迎えている。2008年7月にWTO閣僚会合が開催され、連日連夜、高級事務レベル会合だけでなく、閣僚レべルでも交渉が行われ、そこでは交渉の妥結に向けてギリギリの調整が行われた。WTO閣僚会合の枠組みは、G7と呼ばれる主要国(日本、米国、Eu、豪州、印、伯、加、中国)であったが、G7内の見解の相違を埋めることはできず、WTO交渉は決裂に至った。その後、2008年7月のWTO閣僚会合の交渉の成果を活かすべく、わずか5力月後の2008年12月に再びWTO閣僚会合を開催する動きが水面下で見られたものの、W To閣僚会合の開催は結局見送られた。一般的にWTO交渉は停滞していると見られているが、日本の農業政策に対して大きな影響を与えることになるため、今後の交渉の行方を注視することは極めて重要である。そこで、本稿では、筆者がWTo農業交渉の担当として携わつた2 00 8年7月に開催されたWT0閣僚会議を中心に12月の閣僚会合の断念に至るまでの交渉の主要論点について、日本の基本的なポジシヨンを踏まえて、概説するとともに、今後の交渉に行方について見解を述べることとする。