ブドウ根の肥厚並びに外層部の離脱過程における細胞組織構造の変化

摘要

本研究は，ブドウ樹を用いて根の肥1￥に伴う外層部の離脱の組織構造を調査したものである.ブドウ根の細胞糸II 織の離脱は内皮を含む外側の組織が離脱する一次離脱，その後，内鞘の分裂によって形成された周皮が離脱する二次離脱 に区別できることを示した.ブドウ根は齢とともに肥厚し.肥厚に伴って外層部の表皮.皮層，内皮が離脱し，つづい て内鞘の分裂により形成された周皮も外側から順次離脱していった.根の肥大には木部を構成している道管とその周辺の 柔組織ならびに放射組織の発達が大きく関連していた.ブドウの白い新根は加齢に伴って褐色になり木化するが，その過 程で皮層組織が崩壊するとともに一次離脱が見られるようになった.内皮の離脱の前段階で内鞘が接線方向に橾り返し 分裂し数層に増加した.この層数の増加に対応して内皮と内鞘の間が分離し，内皮を含んだ外層組織が脱落した.カスバ リー線を形成した内皮は離脱前に細胞が膨張し，その細胞壁に蓄積していたスベリン様物質は次第に薄くなり.内鞘にス ベリン様物質の蓄積が移行するものと推察された.根の断面の数か所に周皮の盛り上がりが形成され，その中央部の外W 部に亀裂が生じ皮目が形成された.デンプンは放射組織細胞に蓄積し，離脱する周皮細胞にはデンプン蓄積は見られな かった.成熟根の周皮の最外層の数層には強く'虽'光発色したスベリン様物質が見られ，水分吸収のフィルタ一として機能 しているのではないかと考えられる.