ニホンアカガェルの非繁殖期における谷戸空間の利用特性

摘要

丘陵地の谷戸は，底が平坦面となる浅い侵食谷と，その周辺樹林がまとまって単位となっている環境である。 そこでは，ひとつの小集水域のなかで，水田，ため池，草地，農用林などの様々な農的環境から構成されている。 このような谷戸空間には，豊かな生物相が形成されてきている。 本研究では，谷戸空間を主な生息環境としているニホンアカガェル（Rama Japoica）に着目した。 早春に浅い止水域で産卵し，繁殖期が終わると春眠に入り，5月頃から再び活動を始め，草原や樹林地を生息空間としている。 このように本種はそのライフサイクルにおいて水域，陸域の両空間が不可欠であるため，谷戸の指標種といえる。 また，本種はへど類，サギ類の重要な餌資源であり，地域生態系において重要な役割を担っている。