大規模土地改良区における農業水利施設の重層的維持管理の実態と課題－岩手県胆沢平野土地改良区を事例として－

摘要

わが国の大規模土地改良区における維持管理は，大きく2つに分けることができる。 一つは用水の配水や降雨時の排水を行う水管理であり，もう一つは，通水を良好に保つための水路の浚渫、雑草等の刈り払い作業や施設、設備の保守点検業務を行う施設管理である。 このうち水管理については，頭首工や幹線用水路等の基幹的水利施設の管理を土地改良区が担い，支線用水路以下を各水路の受益農家で構成される水利組織や集落（ムラ）が担当するといった重層的な管理体制が敷かれてきた1）。 また施設管矧こついても，基本的には水管矧こおける重層的管理体制の下で行われているが，その役割分担は必ずしも水管理とは同じではなく，幹線水路等の水管理は土地改良区職員が行うが，施設管理のうち，水路の波漢や刈り払いは受益農家の組合等に委託される場合が多い。