農村において食用利用される野生植物と 地域植物相との関係に関する研究 一椐木県馬頭地区を事例に—

摘要

農村計画学において農村の生物多様性を扱う場合，単 に生物学的な多様性のみならず，「農村社会と不可分の ものとしての生物多様性」という視点，すなわち一体 的に成立してきた農村社会の知恵や文化と生物多様性と の関係も併せて扱うことが不可欠である。そのため生物相に対する認識や，生物資源利用の実態といった，地域 の生物多様性と住民の暮らしとの具体的な結びつきにつ いての実証研究が求められる。その際，最も密に住民が利用する住宅敷地には野生植物が導入、利用され易く ，その農村計画上の位置付けも検討する必要がある。 関連する既往研究としては，住宅敷地内の植栽植物の 種構成や配置状況，生業や土地利用の変化と農村にお ける資源利用の関連，利用対象生物を扱った民俗 学的研究,民家庭園に導入されたレッドリスト植物の 現状等はあるが，背景となる地域の植物相の多様性と 生物資源利用との関連を論じたものはほとんどない。