二〇〇九年度農業予算は食料自給率50％目標への一里塚となるか

摘要

本稿の課題は二〇一〇年三月に策定される新食料、農業、農村基本計画の最大の眼目である供給熱量総合食料自給率五〇％目標（二〇二〇年度）の達成に向けて、二〇〇九年度農業予算がいかなる一里塚を築いたのかを検討することである。　本来ならば、基本計画の概要の決定とあいまって、計画実施初年度たる二〇一〇年度予算において自給率向上戦略の検証を行うべきであろう。しかし、今回の新基本計画策定は、「食料自給力強化のための取組と食料自給率五〇％のイメージ…食料自給力、自給率工程表－」（二〇〇八年二一月二日）が先行的に農水省から公表されるという例外的な形で進められている。そこには、一方で二〇〇八年に世界的な規模で進展した「食料危機」りの下における日本の異常に低い食料自給率の問題性が多くの国民の前に白日の下にさらけだされたという現実と、他方では流動的な政治情勢の下で政府与党が農村票の獲得を意識して抜本的な農業政策の構築に向かわざるをえないという要請が影を落としているということができよう。