家畜行動の理解と 家畜管理への貢献: 第1回

摘要

家畜の行動は，他の動物と同様，自己の生存と生殖の効 率化のもとにプログラムされている。各家畜は.約1万年 前から私たちとの歩みをはじめた。いずれの家畜も，それ を越える数百万年の長い期間を，環境への適応のために費 やしている。祖先種(近縁種）の行動から.その家畜の行動 特性を検討することもある。もちろん家畜化の過程，選抜 の過程で様々な行動的変化が起こり，そもそも家畜として の飼育環境には制約があるため，私たちが観察する家畜で ある牛には牛の，豚には豚の行動的特殊性が存在する。動物の行動は，「何によつて行動が起こる力、（行動の原 因）」と「行動の結果がどう動物の生存や生殖に影響する 力"行動の機能)」という面から解読する。行動の機能は， その行動の目的であり，適応的意義を表すものである。行動の原因は，時間尺度の違う3つの観点でとらえることが できる。すなわち，動物進化と比較すれば①きわめて短い 時間内での行動発現(摂食.休息.繁殖)，②行動解発機構 や学習などに代表される個体の成長を通じた行動の変容， さらに③世代を重ねた行動の進化である。これらは行動の 機能（究極要因）と合わせ，ティンバーゲンの4つの課題" として提示される。