ケーススタディー(10)脊髄病変1先天性疾患一重複脊髄症

摘要

今回から脊髄病変の症例を紹介する。脊髄に病変がある と，傷害された脊髄の部位に相当する部分に運動障害と感 覚障害が生じ，四肢または後肢の麻痺が生じる。動物にお ける具体的な症状としては，跛行，ナックリング，後躯麻 痺，起立不能あるいは排尿、排便障害が発現する。跛行や ナックリングは運動器の異常や末梢神経障害でも生じる し，起立不能は上位中枢の異常(大脳や小脳など)，代謝性 疾患，あるいは神経系以外の各種疾患の重篤化に伴う全身 状態悪化によってもみられる。このため，その症状が脊髄 疾患由来であるかどうかの判断は難しい。なお，医学および小動物領域では，X線，CTおよびMRIを駆使すること によつて脊髄病変を検出することができる力5.大動物領域 ではこれら画像診断技術を適用できることはあまりなく， 生前の確定診断が困難なことも多い。