産業動物への再生医療の可能性と課題

摘要

生体の失われた組織や臓器の再生修復が可能となれば， ヒトを含めた動物にとって難治性疾患の理想的な治療法と なる。これまでに，医療外科領域では再建外科治療と臓器 移植の試みがなされてきた。このうち再建外科治療では， アシストする生体材料の生体適合性が低く，その代行でき る生物機能も単一であることから，臨床においては患者に高いQuality of Life(QOL)を与えることが困難であるとさ れてきた。一方，臓器移植もドナー不足に加えて，免疫抑 制剤の副作用に伴う問題が指摘されていて，普及が思うよ うに進まない現状にある。このように，再建外科と臓器移 植のニ大先端外科治療に限界があるなか，近年注目されて きたのが再生医療である。この再生医療が医療応用されれ ば，再建外科と臓器移植治療に続く第三の先端外科治療法 となると思われる。この再生医療は生体材料に依存しない こと，ならびに免疫抑制剤を必要としないことで先行の二 大先端外科治療法とは大きく異なっている。