ケーススタディ一(1)前脳病変1内水頭症を疑う症例

摘要

本連載では，牛の神経疾患のうち神経症状を主徴とする 代表的な症状と病変部位の関係について概説し.鑑別診断 リストを整理してきた。また，鑑別診断を行うにあたって 必要な各種臨床検査法，画像診断法および病理診断法につ いて解説を行ってきた。今回からは，各論として実際の神経疾患症例を紹介し， 各種神経症状に対する具体的な診断へのアプローチ法と考 え方を解説したレゝ（ケーススタディー）。なお，神経疾患の 分類には，原因別，位置別，あるいは症状別など色々な方法がある。以前本連載で示したDAMNIT-V分類は疾患の 病態、原因別分類であり，鑑別診断リストを作成して体系 的に診断を進める場合に原因の見落としが少なくなるとい う利点がある。一方，臨床的にはどこに病変があるかを診 断の最初の手掛かりにすることも多く，また動物の飼い主 にも説明がしゃすい。このため，各論ではまず疾患を病変 の存在位置により前脳(大脳と間脳)，小脳，脳幹，脊髄お よび広範に分け，それぞれについていくつかの症例を用い てアプローチの仕方を解説していきたい。