薬理学トピックス（189)

摘要

動物由来の抗生物質耐性菌が人の身体に伝染するかにつ いては，長年，公衆衛生上の問題として多くの論議が展開 されてきたが，未だに結論は出ていない。この問題を調査してきた英国、ケンブリッジのWellcome Trust Sanger 研究所が，世界各地から人と動物由来のサルモネラ耐性菌 を集めて遺伝子解析した結果を発表した。ホールゲノム ショットガン配列決定法で遺伝子構成を調べた結果である 力サルモネラ耐性菌でも人と動物とでは系統的な関連が 薄く，牛，豚などの動物由来菌が人に伝搬する可能性はき わめて少ないということである（Science誌*)。この論文の 考察で著者らは，サルモネラに限らずほかの耐性菌につい てもそうしたことがいえるかもしれないとしている。動物 と人の抗生物質耐性菌のリンク問題は長年にわたり続けら れてきたこともあって，この発表は各方而で論議を呼んで いる。