産業動物臨床におけるNSAIDsの意義

摘要

非ステロイド系抗炎症薬，Non－Steroidal Anti－InflammatoryDrugsを略してNSAIDs，エヌセイドまたはナシドと呼ぶ。 NSAIDsは，抗炎症，鎮痛，解熱，血液凝固阻害，その他多様な作用を持つ。 今，動物薬として最も開発の盛んな薬群のひとつである。 抗炎症剤としてはステロイドが先に開発されたが，これは作用が広すぎて副作用が強い。 この欠点を克服しようとして開発されたのがNSAIDsである。 しかし，人類がNSAIDsの薬効に気づいたのはステロイド剤開発よりもはるかに古い。 江戸時代の浮世絵に柳の木の皮でできた歯ブラシを使っている図があるが，これは柳の皮にはサリチル酸が含まれており歯茎の腫れを治めてくれることを期待したものであろう。 サリチル酸といえばNSAIDsの元祖アスピリンの看効成分だから，江戸時代の人はNSAIDsの効用を知っていたことになる。外国こもそうしたエピソードがたくさんある。