スギ花粉症を取り巻く諸問題 －スギ雄性不稔個体の利用と開発－

摘要

1962年以前には，アレルギー性鼻炎の患者は日本に存在しないといわれていた。 しかし，1962年，斉藤らが栃木県日光でスギ花粉症患者を報告して以来，スギ花粉症患者が年々急増し，現在では大きな社会問題になっている。 スギ花粉症患者が急増した原因としては，大気汚染の増大，食生活の変化などが上げられているが，明確な因果関係は明らかではなく，確実にいえることばスギ空中花粉総飛散数が増加したことである。 スギ花粉に含まれる抗原Cryj1，Cryj2が花粉症の原因物質であることから，スギ花粉症対策として，スギ林からの花粉飛散抑制が強く求められている。 しかし，効果的な対策は取られておらず，スギ林からの花粉飛散量は年々増加している。 これは，日本がおかれている経済的社会的要因が大きく影響しており，日本におけるスギ林からの花粉飛散対策は，これらのことを十分考慮したうえで検討されなければならない。