ホルスタイン種育成牛にみられた 腹膜心膜横隔膜ヘルニアの1症例

摘要

放牧飼養されていた13力月齢のホルスタイン種育成牛に腹膜心膜横隔膜ヘルニアが認められた。横 隔膜の腹側2/3程度が欠損しており,欠損部から心膜へ移行していた。そのため,腹腔と心膜腔が 一つの腔となっており,腹腔内の諸臓器(肝臓の一部,第二胃,第三胃,第四胃など）力《横隔膜欠損部 より頭側に変位し,心膜腔内に位置していた。牛の腹膜心膜横隔膜ヘルニアは過去に4例報告がある せ,いずれも短命であった。本症例は長期間顕在化せず,13力月齢まで生存した,極めてまれな症例 であった。腹膜心膜横隔膜ヘルニアは,横隔膜筋部の胸骨部 と心膜の一部が先天的に欠損し,腹腔臓器が心膜腔 内へ逸脱したものである2)。牛では非常にまれな奇 形であり,過去に報告されているのは4例1-3)のみ で,長期間生存したものはいない。