鶏の頭部種脹症候群（SHS）に関する冥験的研究－トリレオウイルスのトリガーとしての役割および発病病態の検討－

摘要

頭部腫脹症候群（SHS）自然例より分離されたトリレオウイルス（ARV；1055TCID50／羽），七面鳥鼻気管炎ウイルス（TRTV；10~(5．5)TCID_(50)／羽）および大腸菌（E．coli；10~8 CFU／羽）を用いて，伝染性ファブリキウス重病ウイルス（IBDV；10~(4．75)EID_(50)／羽）による免疫抑制下での混合感染実験を行った。 実験群ほA（E．coli），B（ARV），C（ARV＋E．coLi），D（IBDV＋ARV＋E．coli），E（TRTV），F（TRTV＋E．coli），G（IBDV＋TRTV＋E．coli），H（Control）の8群を設定し，lBDVは1週齢時に経口接種，ARVおよびTRTVは3週齢時に，E．coliは25日齢時にそれぞれ耳管開口部に滴下接種した。 組織学的にほ，朗蓋骨airspaceや中耳において肉芽腫形成性線維素化膿性炎がA群（1／9），C群（2／11），D群（5／7），F群（2／12），G群（2／8）に認められ，D群において最も高率であった。 頭蓋骨airspaceおよび中耳における肉芽腰性病変は，間接蛍光抗体法，間接酵素抗体法によりE．coliに起関する細菌性肉芽脾と同定された。 口蓋扁桃では，TRTV接種群に対しARV接種群においてより高率にリンパ組織の増生および胚中心の形成が認められた。 今回の成績では，従来よりトリガーとして示唆されているTRTVよりもARVのほうが病変陽性率が高く，SHSの頭蓋病変形成にARVがトリガーとして関与することが判明した。 更に頭蓋骨airspaceおよび中耳病変の形成には，免疫抑制とARVやTRTVなどの上部気道をおかすウイルスがトリガーとしてかかわり，咽頭と頭蓋骨airspaceを連絡する耳管を障害して細菌の侵入を容易にし病変が形成されることが示唆された。しかし，肉芽陣形成性化膿性皮下織炎を特徴とする頭部の腫脹は誘発されなかった。