生理的GnRH放出因子，メタスチン（キスペプチン）の基礎と応用

摘要

創薬の分野では，リガンドの見つかっていない受容体，いわゆるorphan receptorから内因性のリガンドを探索し，そのリガンドを薬へと開発するreverse pharmacologyが一般的な手法となっている。 メタステンはそのような手法により発見された内因性ペプチドであるが，当初の予想をはるかに超えた研究の拡がりを見せ，また新たな応用の可能性をはらんでいる。このペプチド，生殖内分泌の分野では，故あってキスペプチンkisspeptinという名前で呼ばれており，繁殖分野の論文ではキスペプチンの方が優勢である。ヒトにおける応用はいくつかの方向で進んでいると考えられるが，ウシなど家畜における研究は筆者らのグループを中心として始まったばかりである。 われわれは，この新たなペプチドが畜産獣医分野における繁殖制御法や繁殖系疾患の治療への新たな展開のシーズとなると考え，畜産獣医学分野の方々への研究の現状を紹介する。