子牛およびめん羊における実験的チアミン欠乏症，特に大脳皮質壊死症の病態生理学的検討

摘要

大脳皮質壊死症（CCN）は神経症状を主徴とする反 鶴動物の疾病でありチアミン欠乏に起因する。本症の病態を臨床，生化学および病理学的観点から総合的に明らかにするために，チアミン措杭薬のアンプロリウムを投与された子牛およびめん羊を用いて，一連の試験を行った。 最初に，アンプロリウム投与後から死亡までの病態を検討した。 アンプロリウムを投与された子牛およびめん半ば異常脳波および神経症状を示して死亡した。 病理学的にCCNが確認された。 死亡時の血液および組織中のチアミン濃度は低く，チアミン欠乏が認められた〇全血中チアミン濃度およびトランスケトラーゼ（TK）活性の低下は異常脳波の発現以前から認められ，チアミン欠乏の指標に有用であったロ次に，アンプロリウム投与めん羊をCCNの経過にぉいて剖検した。異常脳波が発現した時点において，血液および組織中のチアミン濃度はすでに低値であった。 異常脳波発現当日には脳に病変は認められず，異常脳波発現の翌日以降に神 経症状および脳の病変が認められた。 最後に，CCNの経過において，アンプロリウム投与めん羊にチアミンを投与し，予後を観察したロチアミン投与後4時間以内に，血液中のTK活性は上昇，ピルビン酸およびグルコースは低下し正常値に回復した。これらの所見はチアミン製剤が投与された時点の症状の程度によって差がなかった。 症状の軽い時点に投与されためん羊は臨床的な同復がすみやかであったが，神経症状が明らかな時点に投与されためん羊では，回復の経過に個体差が見られた。 臨床的な回復が遅れたり完全でなかった個体の大脳皮質の病変は重度かつ広範囲であり，他の脳部位にも病変が認められた。