ワクモ（Dermanyssus gallinae）の生態と最近の問題

摘要

ワクモ（Dermanyssus gallinae：red mite，poultry mite，chicken mite，bird mite）は南極を除くすべての大陸に分布するダニで，1778年にDe GeerがAcarus gallinaeと命名記載し，その後，1834年にDugesによってDermanyssus gallinaeになり今日に至っている。 わが国では1928年に赤尾六三郎によってワクモによる人刺咬の症例が初めて報告されたが，烏での採取例や鶏における被害例の最初はトリサンダニのように明らかではない。 しかし，1952年に出版された養鶏綜典には，すでに「だに（わくも）」の項目で，寄生の状況と駆除が記載されている。 トリサシダニは1963年に北岡らが愛知県下での実射こおける初めての被害例を報告して以来，急速に生息域を拡大し，数年前まではわが国の養鶏産業界に多大な被筈を与える鶏外部寄生虫の筆頭であった。 その間，ワクモは小規模養鶏場や自然養鶏場においての発生はあったが，近代的飼養形態の養鶏場ではみられなかった。しかし，最近，鶏の飼養形態，季節，地域を問わず，ワクモの発生が急激に増加している。