土壌生態圏の未来：人間活動が大気と土壌生態系に及ぼす影響

摘要

20世紀半ば以降の50年間に，人間は工業，農業などの産業だけでなく，交通，生活など社会全般にわたる大きな変化を経験した．化石燃料という一度限りの資源に頼ったとはいえ，50年間で2.5倍に増えた人口に対して，それを上回る量の食料を生産し，世界全体では飢えや栄養不足を減少させてきた．もし，宇宙から地球を冷静に見つめる存在があれば，「人類は，種全体としては繁栄している」と判断するのではなし）だろうか．もちろん，少し眼をこらせば，消滅しつつあるアラル海や，インド洋から南アジア上空にかかる茶色い雲（http：／／www－abc－asia．ucsd．edu），あるいはゴビやタクラマカンの砂漠から舞い上がる黄砂（http：／／www.data.kishou．go.jp／obs－env／kosahp／info－kosa．html）が眼に入る．さらに詳しく個々の国や地域を見れば，繁栄とは対極の荒廃した様子を無数に目の当たりにするに違いない．それでも人類全体としては，たとえ「繁栄」と呼ぶのは気が引けるにせよ，less miserableな方向に変化してきたと言えるのではないか．