花卉園芸で活躍するバイオテクノロジー

摘要

花卉において現在利用されているか，あるいは将来利用されるであろうバイオテクノロジー分野の辻伝子関連の項目を中心に解説した．筆者が研究中のテーマにも触れながら，花卉におけるバイオテクノロジー技術の応用における問題点をも提示する．遺伝子を導入した作物の実用化は，わが国では直接口にすることのない花卉が最も早いであろうといわれている．サントリーはオーストラリアのFLORIGENE社との共同研究で，ペチュニアからクローニングしたフラボノイド3'，5'水酸化酵素の遺伝子をカーネーションに導入することに成功した．このカーネーションの花色は透明感のあるフジ色で，‘ムーンダスト’と命名されて1997年10月から発売されている．店頭では遺伝子を導入したカーネーションであることを表示して販売している，他の民間企業も遺伝子導入による花卉の品種育成を目指して研究を進めており，今後ますます遺伝子を導入した花卉の生産販売が増加するものと思われる．最近の我が国ならびに外軌こおける，主な花卉での遺伝子導入の実用化に向けての研究成果をまとめると表1のようになる．