カキ新品種‘丹麗’と‘錦繍’

摘要

1．‘丹麗，と‘錦繍，は果樹試験場カキ，ブドウ支場が育成した秋季の紅葉利用のための品種である．両品種とも1978年に‘カキ興津2号’に‘カキ興津15号’を交雑して得られた交雑実生で，1993年7月16日付で‘丹麗，は‘かき農林5号’，‘錦繍’は‘かき農林6号’として登録，公表された．また，1995年6月13日付で種苗法に基づき‘丹麗’は登録番号4539号として，‘錦繍，は登録番号4540号として品種登録された．2．‘丹麗’の落葉期の葉色は日本園芸植物標準色票の「橙赤」、「濃橙赤」で黄色味を帯びた赤色である．‘錦繍’の落葉期の葉色は「濃橙赤」、「濃赤」で鮮やかで濃い赤色である．両品種とも着色のそろいは良好である．育成地（広島県豊田郡安芸津町）では，‘丹麗’，‘錦繍’とも紅葉の始まりは11月上旬で，‘伊豆’，‘前川次郎’などと比べて2～3週間早い．完全に色づいた葉が80％に達するのは‘丹麗’，‘錦繍’ともに11月中旬であるが，‘錦繍’の方がやや遅い．3．‘丹麗’，‘錦繍’とも樹勢と樹の大きさは中位で，樹姿は開張である．4．‘丹麗’，‘錦繍’とも果実は‘富有’よりもやや小さく，晩生のpollination constantの甘ガキである．‘丹麗’は果実の肉質がやや粉質で食味が劣る上に，雌花の着生が少なく，やや生理落果しやすい．また，‘錦繍’はかなりの生理落果があり，果頂裂果性もある．両品種とも果実生産のための経済栽培には適さない．