ビリプロキシフェン剤のチャ寄生クワシロカイガラムシに対する防除効果と天敵類に対する影響Ⅱ．クワシロカイガラムシの土着天敵に対する影響

摘要

チャのクワシロカイガラムシPseudaulacaspis pentagon（Targioni）の防除では，従前は幼虫ふ化期のわずか数日間に薬剤を散布する必要があった。しかし，新規剤のピリブロキシフェン剤を用いた防除では，農繁期を避けた冬期に本剤を1回散布することで第2世代以降までカイガラムシ密度を抑制でき，本剤は既存剤と比較して大きな利点のあることがわかった（前報）。　一方，ピリブロキシフェン剤は幼若ホルモン様の活性を示すため，様々な昆虫類に対して活性のあることが推察され，天敵昆虫などに及ぼす影響も懸念される。クワシロカイガラムシの土着天敵は，静岡県では10種が確認されているが，本斉は捕食性天敵のハレヤヒメテントウPseudoscymnus hareja Weiseに対して羽化阻害作用のあることが室内試験で判明している。そこで，本稿では，本剤の寄生蜂チビトビコバチArrhenophagus albitibiae Giraultに対する影響とハレヤヒメテントウに対する長期残毒について調べたので，その結果を報告する。なお，本研究は，プロジェクト研究「生物機能を活用した環境負荷低減技術の開発」の補助を受けて実施した。