第Ⅳ章　サクラソウの根組織培養による種苗生産技術の確立 －培養体由来根組織培養によるin vitro繁殖－

摘要

サクラソウは河川敷や草原など明るい湿地に生育するわが国原産の多年生草本であるが，全国的には野生状態での自生地の多くは開発のため消失し，山野草愛好家による採集もあって保護地以外は絶滅寸前となっている（井上，1993）。 また，江戸時代に作出された約200品種の園芸品種（大垣，1979；鳥居，1980）も現在は少数の趣味園芸家により株分けで増殖、維持されている状況にある。 近年，中国地方の中山間地域では，サクラソウの自生地の復元を目指して，また，希少園芸品種の鉢花生産を推進するために種苗増殖に取り組んでいる自治体がある。 種苗の大量増殖には組織培養技術の利用が考えられるが，操作が簡単で増殖率が高く，短期間で安定して育苗できなければ実用化が難しい。