IARS異常症発症牛にみられる身体的、生理的特徴

摘要

家畜で大きな影響をもたらす遺伝性疾患の多くは、 不良遺伝子（正常遺伝子に変異が生じて正常に機能し なくなった遺伝子）のホモ化によって初めて表現型に 現れる劣性遺伝性疾患である。このため気づかれない 間に不良遺伝子がヘテロ （保因）の状態で家畜集団内 に広まる恐れがあり、原因遺伝子変異の特定と診断方 法の確立が不良遺伝子の拡散を防除する手段として非常に重要である。Hiranoら（2013)は、黒毛和種集団 内に広まっている新たな劣性遺伝性疾患としてIARS 異常症を報告し、PCR-RFLP法を用いた簡便な遺伝子 診断法を開発した。2013年4月には農林水産省より、 本疾患が「肉用牛に係る遺伝性疾患（IARS異常症）」 として新たに公表された（木村2013a、木村2013b、高 橋2013)。本稿ではこれまでの調査結果を基に、遺伝 子診断によって1ARS異常症と判明した複数の症例を 集計し、限られた症例から垣間見えた傾向も含めて、 IARS異常症の特徴について紹介したい。 v