エゾアワビ初期稚貝と小型植食性巻貝の餌料を巡る競合関係

摘要

アワビ類の初期稚貝は飢餓に対する耐性がきわめて低く，飼料環境が生残、成長に大きな影響を及ぼすものと考えられる（TAKAMI et al．2000）. エゾアワビの室苗生産現場では,塩化ビニル製の板上に自然繁茂した付着珪藻を殻長3cm前後のアワビ椎貝に簡葡、摂食させたいわゆる「なめ板」が幼生の採甫坂および着底後の初期椎貝の育成場として用いられており,この「なめ板」上には初期椎貝にとっての好適な餌料環境が〔宋証されている.サイズの大きなアワビ椎貝が舐め坂上を働詞、摂食する際に分泌される足庶粘液は,幼生の者底を誘弓し（関、菅野1981），また粘液自体が変態直後の初期椎貝の飼料となる（TAKMI et al.1997a）. なめ板上には，アワビ椎貝に食い残されたCocconeisなど付着力の強い珪藻が優占している（SUZUKI et al.1987）. これらの珪藻は，アワビ椎月や成員には食われにくいが，初期椎貝にとっては好適な飼料となることが明らかにされている（KAWamURA et al．1995，高見ほか1996）.したがって，アワビ稚貝や成貝の摂食活動は，初期稚貝の好適な餌料環境を整える上で重要であることが予想される（河村1998).