乳牛の骨粗鬆症と低酸度二等乳

摘要

新鮮な牛乳が原因不明でアルコール試験で凝固すると き低酸度二等乳と云われる。また加熱試験で凝固するよ うな乳が混入すると殺菌時に凝固物が形成されプレート 式殺菌機の目詰まりの原因となる。さらに異味を呈する 乳は乳製品の原料として不適である。ある時，大学の付 属牧場の全ての搾乳牛がアルコール試験陽性，なかには 加熱試験でも凝固することが判明した。このような事態 は突然発生したのではなく，それ以前から日常的に発生していたに違いない。この現象は1940年代にオランダ で発生した"the Utrecht abnormality of milk"と酷似し ていた。このとき牛乳がアルコール試験で凝固するのは 乳中にイオン状Caが増加しているためであるとされ た。個乳の分析と同時にその乳牛の血清も採取した。そ の結果，若齢牛ではアルコール試験の陽性反応が強くそ の原因はカゼィンとCaが多いため，高齢牛では加熱試 験で強く凝固しその原因はグロブリンが多いためでカゼ イン含量が少ないのでアルコール試験に凝固し難い。さ らに後者は強い刺激味を呈した。個乳はイオン状Caの みならず総Caが高く総Mgが少ない傾向を示した。血 液は若齢牛では血清Caが高く血清Mgがやや低い，高 齢牛では血清Ca,血清Mgともに低くこれに対して血 清グロブリンが高い傾向を示した。このことは若齢牛は 強くアルコール試験に陽性を示し，高齢牛は加熱試験に 強く凝固を示したことと深く関係する。