大規模畑作地帯における農協堆肥製造事業の背景と意義－北海道更別村農協を事例に－

摘要

現在北海道十勝支庁に広範に展開している原料農産物地帯は，戦前から1960年代頃まで続いた浅耕少肥作物である豆作主体の生産構造が，トラクターの導入による深耕と化学肥料の多投によって深耕多肥作物であるてん菜，馬鈴薯へと変化するという過程を経て成立した（註1）。 それは，農政による大規模、専門総官の創設を目的とした支援を挺子として展開したが，実際にはその受け皿である農協がそれを利用しながら積極的に地域農業を再編していった。 ニうした傾向は卜勝において特に顕著であり，それは原料農産物であるがゆえに大規模な生産流通施設の整備がなされ，そのような大規模な資産を有効に活用するための生産体制の整備が必要であったことによる（註2〕。 本稿ではそうした農協による地域農業の再編過程を事例的に明らかにすることが課題であるが，特に80年代後半からの時期に焦カを当てる。 既に述べたような豆作から根菜類への転換は一方で有傑物の不足による地力問題という矛盾を本来的にはらんでいたのであるが，もう一方でてん菜の重量取引，澱原用馬鈴薯主体の生産構造という矛盾の発散回路をたどることによって，問題の顕在化を先延ばしてきた。 しかし80年代後半から変化が現れ始めた。 それは86年から開始されたてん菜の糖分取引への移行と，馬鈴薯を巡る市場動向の変化に対応した澱原用馬鈴薯から加工生食用馬鈴薯への用途転換というものであった（註3）。 こうした条件の変化によって十勝の周辺部ではそれまでの矛盾が顕在化することになり，生産体制の再編が必要になったのである。