熱帯農学に釦ナるモデル、リモートセンシングデータの活用と現地調査との融合

摘要

熱帯地域では，前世紀の半ば以降，人口の急速な増加が続いている．第2次世界大戦や独立に関わる混乱や内戦から秩序を回復させた地域を中心に，熱帯医学の進歩や医療サービスの地域への浸透が，人口増に拍車をかけている．当然ながら，このような急速な人口増に対して，農業生産を増加させる必要がある．農業生産を増加させるには，よく知られているように，二つの方法がある．一つは，農地拡大であり，もう一つは単位面積あたりの生産性の向上である．熱帯地域では，ごく近年に至るまで，最初の方法，即ち農地拡大によって，農業生産の増大を図ってきた．このような農地の外延的拡大は，条件のよい土地から，次第に農耕に適しているとはいえない地域にまで農地を拡大することになり，結果として生産性の低下，あるいは生産の不安定化を招くと同時に，開発した農地の放棄も目立ち，環境問題が生起することとなった．現在，熱帯地域においても，農地拡大はほぼ終焉を迎えているが，農地拡大がもたらした悪影響は，なお大きな課題として残っている．