上下顎移動術を適用し後方移動に伴う下顎骨反時計回り回転を防止して治療を行った骨格性Ⅲ級開咬症の1例

摘要

本症例は,下顎が突出していることを主訴に来院した20歳2か月の日本人女子である。 分析結果からAngle class Ⅲの不正校合で,下顎骨の過大および前方位による骨格性Ⅲ級開校と診断された.治療計画において外科的矯正治療が必要であると判断された.手術法は,下顎骨のみの片顎手術を適用した場合,下顎骨遠位骨片に反時計回りの回転が生じ,術後の後戻りや審美性の改善不良などの問題をおこすと考えられた.そこで本症例では,上顎臼歯部を上方へ時計回りに回転移動させ,後方移動に伴う下顎骨遠位骨片の反時計回りの回転を防止することとした.治療はedgewise法により術前矯正治療を行った後,上顎にLe Fort I型骨切り術,下顎に下顎枝矢状分割術による上下顎移動術を行った. 3週間の顎間固定後,術後矯正治療を行い岐頭嵌合の獲得を図った.その結果,上下顎骨の骨格的な不調和が改善され,安定した校合が獲得されると同時に,反時計回りの回転を起こすことなく下顎骨の十分な後退により良好な側貌が得られた.