落果の機構と対策

摘要

落果は，様々な要因で離脱する果実を意味 するが，本稿では果実の発育中に生理的に離 脱する果実を指す「生理的落果」に対象を絞る。生理的落果の最終過程である離脱は，老化 を促す植物ホルモンの「エチレン」が離脱部 位（離層）において，細胞壁を溶解する酵素 の生成を促し，離層の細胞を壊すことで生じる。果実には2， 3ケ所の離脱部位が存在し， 落果時期によって離脱部位が変化する。開花 直後やその数週間後までの落果では，枝に近 い部位で離脱するのに対し，果実の各所がある程度完成する時期以降（第2期や収穫前） の落果では，果実と果梗（へタ）の間に生じ る離脱帯が反応する。このように，果実発育 が進むにつれて，離脱部位がより果実へ近づ き，果実からの影響を受けやすくなる。