シリーズ2 和歌山のモモ栽培（2）－栽培技術と流通，販売の現状－

摘要

先月号で述べたように，和歌山のモモ栽培は現在の桃山町の紀ノ川南岸沿いの地に発達したものである。 地形的には，河川敷とその南側の丘陵斜面の両方を含み，栽培のためには異なった技術が必要であった。 さらに，昭和後期から平成初期にかけて，この桃山町から外延的にモモ栽培が急速に拡大していったが，それはハツサクなどのカンキツ栽培からの転作（とくに粉河町）や，水田転作などによるものであり，何代もモモ作を続けてきた桃山町の栽培技術とは異なるものが多い。 さらに，桃山町で生産されるモモは，「あら川のモモ」として関西方面の市場に深く根付いており，岡山と並んで「白いモモ」，「進物用モモ」生産を続けたのに対して，後発地帯のモモは，それとは別の販売戦略を講じざるを得なかった。 したがって，和歌山のモモ栽培の技術や流通のあり方などは，現在でも二通りの内容が並存している。 しかし，近年の農協の広域合併や，今年後半に実施される市町村の統合，さらに今年の秋から稼動を始める大型コンピューター選果場の建設に伴って，モモ栽培の技術や流通の統一イヒが達成されていくのか，あるいは小単位ごとの地域特性が維持されていくのかは，微妙な状況にあると思われる。