個体老化の分子機構

摘要

我々の研究室では思わぬ幸運に恵まれ，老化研究に一石を投ずることとなった。 挿入突然変異によって早期老化症状を呈するマウス系統を樹立し，多彩な老化症状が単一遺伝子の欠損によって発症することをつきとめ，原因遺伝子の同定と構造解析に成功したからである。 トランスジェニックマウスを作製する過程では，マウス受精卵の遺伝子に外来遺伝子がランダムに組み込まれる。 そこで，我々は多数のヘテロのTgマウスを掛け合わせてホモマウスを作製し，その変異表現型を解析した。 その中の1系統において，ホモのみが性成熟期より発育が停止し，短命であることを発、見した。 マウスの飼育中には成熟の遅れた個体や早期死亡の個体は，結構観察されることから，よくぞ見逃さなかったと今でも幸運に感謝している。 同時に「幸運は準備された者に訪れる」との言葉の意味の深さをかみしめている。